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近年のアカデミア研究界隈の「選択と集中」に思うこと


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最近バズっている謎水さん (@nazomizusouti ) の風刺イラストを拝見しました。




ここ数年、国の学術研究政策で「選択と集中」というワードが頻繁に出てきます。
ですがそれって、ある意味「当たり馬券を買えば確実に儲かる」みたいな暴論なんですよね。

だって畑違いのお役人にそれが判別できるくらいなら、何年も何十年も専門にやってる先生方がとっくに「成果が出る研究に集中」してワンサカ結果出してるはずですもん。



そもそも「選択と集中」がイノベーションにつながるとは限りません

よく研究成果は山の高さに例えられますが、頂の高さは裾野の広さに依存します
周辺領域の地道な基礎研究があってこその成果なんですよね。

土台もないのに高く土を盛ろうとしても崩れて終わるのがオチ。

予算のパイを奪い合って周辺分野が衰退するような事になったら目も当てられません。



”技術大国”は過去の栄光


技術立国日本、なんてもう昔の話で、科学研究の面においてはとっくに中国に抜き去られています。

→参考:1996-2015 TOP10%論文数の国際シェア推移



2017年に英国Nature紙から発された
「科学界のエリートとしての日本の地位が脅かされている」との警告も記憶に新しいところ。

今年でた平成30年版の科学技術白書(文科省のプレスリリース)でも、
日本の科学研究が近年失速、世界で存在感が無くなりつつあるとの内容がありました。



原因は上記Nature紙で分析されている通り。

他の国々は研究開発への支出を大幅に増やしています。この間に日本の政府は、大学が職員の給与に充てる補助金を削減しました
各大学は長期雇用の職位数を減らし、研究者を短期契約で雇用する方向へと変化したのです
世界の全論文数が2005年から2015年にかけて約80%増加しているにもかかわらず、日本からの論文数は14%しか増えておらず、全論文中で日本からの論文が占める割合も7.4%から4.7%へと減少しています



科学技術に関する国の方針と懸念


上記のような状況にもかかわらず、科学技術白書の第2部:科学技術の振興に関して講じた施策 では、


総合科学技術・イノベーション会議は、政府全体の科学技術関係予算を重要な分野や施策へ重点的に配分し、基本計画や科学技術イノベーション総合戦略の確実な実行を図るため、予算編成において科学技術イノベーション政策全体を俯瞰し関係府省の取組を主導...

やっぱり「選択と集中」をキーワードにしています。



この風潮で私が懸念しているのは以下の点なんですよね。

判断するのは門外漢のお役人。公正に有用性を判断できるの?
会議、書類仕事の増加
流行分野に「前ならえ」の金太郎飴化
配分予算を”毎年見直し”
  →短期的な利益ばかり偏重ない?
そもそも金額と使途が実情に合わない



どうやって有用性を判断するのか?


専門じゃない、研究分野に明るくない官僚が有用性を判断する材料って、結局のところ”産業や利益につながりそうか”って部分だと思うんですよ。

ただ、一般の人にも「お、これいいんじゃね?」って目に留まるころにはもはや先端研究じゃなく手垢がついてることが多々あるのが問題で。



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たとえば、仮に “空中に数ミリの光の粒を発生させる” 技術についての研究があったとします。
そのままだと「そんなのが何の役に立つの?無駄無駄」って一蹴されて終わりです。

予算降りないままその後細々と研究を重ねて、”配線を必要としない次世代光源” として超有用だってことを示せるころには、他国がとっくに似たような研究進めて出遅れちゃってる。と。

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「世界に3人は同じ研究やってると思え」ってよく言いますし、そうなってからじゃ後の祭りです。


あと、勝手なイメージではありますが「有用性を判断するための会議 で出すデータを選定する会議 の日程調整のための会議」みたいなムダ会議ムダ資料が量産されません?


そのムダ削って浮いたお金を研究予算に上乗せしてくれるだけでも全然違うんじゃ?とか思っちゃいます。



研究予算運用の実情


現状の科研費ってかなり頭が固い運用をされていて、

例えば
申請書に「分析にこの機械を導入します~」って申請した場合、機械を買うことできるけど 不具合が出た際の修理には簡単には予算を使えません。(できなくはないけどかなり面倒)。なので「修理すれば直る機械をフルプライスで新しく買いなおす」みたいなことも起こりうるのです。ほんと謎。


あと機械を動かすための電気代にも予算、使えません。

私の出身研究室では「研究費は潤沢だし機器も充実してるのにのに電気代が超カツカツ(電気代は学部内の予算なので...)」みたいなトンデモ状況だったこともあります。


そこら辺の不便さも中の人たちは汲んでほしいんですけどね。
まぁ無理なんだろうなぁ...。



さいごに


もちろん短期でプロダクトが出るっていうのも大事なんですが、
基礎研究が立ち行かないと技術の先細りが目に見えているんですよね。


いくら軽量で安価でギミック山盛りな馬車を作れるようになったところで よその国が自動車を発明しちゃったら産業的にぜったい勝てっこない。

イノベーションってそういうことですし。



個人的に研究って植物と似ていると思うんです。

種の大きさも、芽がでるまでの期間も、花の大きさもモノによって全然違う。


種が大きくて成長が早くても実がなる前に枯れてしまうのもあれば、砂粒みたいに小さな種から大輪の花が咲くこともある。芽を出すまで地中に何年も眠っていたかと思えば、いきおい成長して一面をうめつくしたりもして、何がイイモノなのかは種のままじゃ判別できない。



企業研究での「選択と集中」はもちろん非常に大事です。

営利組織なんだから利益につながる研究に優先的に投資するのは当たり前。

だからこそアカデミア研究では企業で拾えない基礎研究へ注力してほしいというのが個人的な思いなんですよね。


一昔前までは企業でも基礎研究に力を入れていましたが、最近厳しいようでプロダクト志向バリバリですし。(うちの会社がそういう傾向なだけかもしれませんが)



難しい問題だとは思いますが、せめて基礎研究と応用研究とで枠を分けるとか(基盤研究と応用研究は競合すべきじゃない)、プロダクト志向な研究は産学(産官学)連携を強化して予算を確保するとか。


先細る前に、より実情に沿った運用になってほしいものです。




おわり!

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