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クロロホルムで人は本当に昏睡するのか?!




サスペンスものでよくあるこういうシーン


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「ハンカチにしみこませたクロロホルムで気絶させ犯行に!」



今回は”クロロホルムで本当にこんなことできるのか?”ってところを解説していきたいと思います。


ちなみに結論から言うと、クロロホルムで昏睡するのはまず無理です。

あと素手でこんなことしてたら手がバリッバリに荒れるので、犯人探しはあっという間に終わるはず。クロホの脱脂力をなめちゃいけません。冬場ならあかぎれひび割れを量産することでしょう。


さて、


どうも!化学系バーチャルブロガーのアオミです。学生の頃は実験で(合成・精製)に週に5リットルはクロロホルム(以下クロホ)を使ってました。



企業に入ってから安全に厳しくなったので前ほど頻繁には使っていませんが、大学院時代は「クロホは友達!」ばりに使い倒してきたのでそこそこ詳しいですよ~




冷静に考えると”クロロホルム経験者”ってやばい響き...。



「クロロホルム 昏睡」で検索したらレイフ○ものAVがわんさか出てきてびびりました。なんでや!



クロロホルムでヒトは簡単には気絶しない


ハンカチクロホで昏睡は無理。

りぴーとあふたーみー。

ハンカチクロホで昏睡は無理!


よし。
といってもまぁ、歴史的にはクロロホルムが麻酔として医療に使われていたこともあるにはあるのです。1800年代中盤くらい。


しかしもちろん、ハンカチに染み込む量じゃ全然足りないです。あと、内臓への毒性が強いので、量が十分でも不整脈や腎不全などで亡くなる可能性の方が大きいですね。



実際にハンカチクロホをやったらどうなるか?


ハンカチに染み込む程度なのでクロホの量は5mL位としましょう。

このハンカチをかがされたらどうなるか。


予想ではありますが

「鼻と目の粘膜にぶっ刺さるような刺激」

→「めっちゃ咳き込む」

+場合によっては「頭痛と吐き気」


くらいでしょう。

あと、クロホは溶解性が高いのでハンカチの染料が溶けて色落ちしたり、メイクが溶けてハンカチにべっとり着く程度。意識消失には至りません。


それで昏倒しちゃうなら世の有機系はみんな昏睡トリッパー。

安全管理が雑な研究室ではドラフト(実験用の大きな排気ブースみたいなもの)の外でじゃぶじゃぶクロロホルム使うようなとこも珍しくないですからね!(うちの研究室もそうでした)



クロロホルムの脱脂力


冒頭でもちょろっと触れましたが、有機溶媒って脱脂作用が高いものが多いんですよね。クロロホルムは特に。なので素手で扱っちゃうとバリバリに乾燥します。


ちょこっとついただけで皮膚真っ白です(除光液いっぱいつけた後の爪の表面みたいな感じ)。油断するとひび割れになるので夏場でもハンドクリームは必須でした。



なので、仮にクロホハンカチで犯行に及べたとして


「あれれ~?おじさん、その手はどうしたの~?油が抜けたみたいに真っ白けだぁ~」


と、メガネをかけたちびっこに見とがめられてチェックメイト。

その後、ハンカチの色落ちでENDですね。



気絶を狙うなら「ジエチルエーテル」


有機溶媒で昏睡を狙うならクロホよりもジエチルエーテル(通称エーテル)のほうがいいと思います。


エーテルは吸入麻酔としても使われていた有機溶媒。クロホよりも安全域が大きいので、1800年代、クロホに完全にとって変わりました


現在はさらに安全な吸入麻酔があるので日本では使われていませんが、現在でも発展途上国の医薬品の乏しい地域で麻酔に使用されたりしているようです。
私も学生実習でマウスの麻酔に使ったりしました。


ただ、沸点が34.6℃とめちゃくちゃ低いのですぐ揮発してなくなっちゃいますけどね。 即効性もないのでサスペンスの犯行手段としてはイマイチ。量がたくさん必要なのはクロホと一緒ですね。


やっぱりお手軽昏睡はファンタジーです。



おまけ:じつはクロロホルムの味は甘い


実は一回、実験中にクロロホルムのしずくが口に入っちゃったことあるんですよね。

一瞬、ふわっと甘い味が広がって。

お?と思ったのもつかの間、

すぐに「これあかんやつや」って感じのビリッとした刺激がきたので即念入りに口を濯ぎました。


※絶!対!マネしちゃだめです



おまけ2:じゃ、「お酒に睡眠薬混入」トリックは可能なのか?



サスペンス界ではクロロホルム吸引と同じくらいメジャーな「アルコール薬物混入」。


こっちはかなり現実的に可能な方法です。 実際、悪い人が犯罪目当てに使う話も国内外でよく聞きますね。


病院で処方されるような強い即効性の睡眠薬なら、体質にもよりますが余裕でトリック成立しちゃいます。



(ちなみに、錠剤の9割くらいは形を作ったり溶ける時間を調整するためのデンプンやお砂糖なので、薬物混入してたらグラスの底に沈殿が出ます。万一リアルにそんな場面に出くわしたらご注意を!)



以上!おわり!